地上放送のデジタル化については、平成9年3月10日に郵政省の放送行政局長がこれを強力に推進すると表明した時から本格的に始動した。
その年の6月、地上デジタル放送懇談会が設立され、14回に亘って検討が進められ、10年10月地上デジタル放送委員会に答申された。翌11年9月に地上デジタルTVの技術基準が答申され、引き続いて同年11月地上デジタル音声放送の技術基準がまとめられた。
いろいろ問題があったが、上記のような行政側の強い指導によってこの計画は進められた。
即ち、テレビジョンについては6MHzのチャンネル幅を確保したまま2011年までに義務的にUHF帯にデジタル移行する。ラジオについては、チャンネル幅はテレビの4分の1以下だが現行VHF帯アナログテレビの空きチャンネルを使ってテレビとほぼ同時期に移動体向けに特化したデジタル放送を開始すると言う内容であった。
その後テレビについてはほぼ提言通りの施策が進行しており1800億円の国費投入や法律による出・融資、税制優遇なども行われている。
一方、音声放送(AM/FM)は、簡便で廉価な受信機であり、災害時の情報通信のメディアとしての重要性があり、今後とも継続されるが、新しいデジタルラジオは、新規のサービスとして位置づけられている。周波数は、現行UHFのアナログテレビジョンの空きチャネルを利用し、移動受信を前提にチャネルプランが作られることになっている。カバーエリアは県庁所在地を中心としたサービスをすることになっており、三大都市圏は少し広い範囲をカバーする計画となっている。
しかしこれらの具体化に対しては何も明確な方針が示されていないので、エフエム東京等が主導して社団法人デジタルラジオ推進協会を設立して本年(03)10月10日から東京・大阪におけるデジタルラジオの実用化試験放送を実施することになった。法人は既存アナログラジオ放送事業者を中心とする正会員32社、賛助会員44社で構成されている。東京では東京タワーから1セグメント放送と3セグメント放送が行われるが、エフエム東京は移動体マルチメディア放送を充実して行うため3倍のコンテンツが送れる3セグメント放送を実施している。
国策であるテレビのデジタル化と異なり、今のところラジオのデジタル放送は自前で実施することになっているため、費用が大変であり、また受信機も作ってもらえない。そのためエフエム東京は、3セグメント放送受信のためのLSIチップをお金を出して富士通に依頼して作ってもらったり、仙台における受信実験を行ったりしながら受信機メーカーに働き掛けている。3セグメントによる全国チャンネルプランの早期策定が望まれるところである。
具体的な動きとしては、上記デジタルラジオ推進協会が03年9月実用化試験局の予備免許を受け、東京、大阪を中心としたサービスの実験を行っている。周波数は、190.2MHz(VHF 7ch)、変調方式は言わずとしれたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex-直交周波数分割多重)で通常TV1chを13セグメントにわけて直交させて、移動体でも安定した受信ができるような工夫をしている。
東京地区は東京タワーから800W(100W/segment)、大阪は、生駒山から240W(30W/segment)で実験放送している。
例えば、東京は、VHF 7chを5セグメント+3セグメントにわけ、5セグメントは1セグメントづつわけ、その中で2、3社がシェアーしている。残り3セグメントはエフエム東京が全部を使って試験放送を実施している。
表1
技術的パラメータとして、表1のスライドで伝送方式の属性(帯域幅やビット伝送容量など)の比較を示し、表2に要素技術の詳細を示す。これに示すように、デジタル放送の受信機などは、正にデジタル社会の産物であり、アナログとは違った高度な受信機が必要になることがわかる。
デジタルラジオ放送の特徴は、CD並みの高品質な音声放送、移動中でもとぎれの少ない伝送方式、データ放送による付加データの配信、音声と連動した簡易動画などを享受できることである。また、想定される番組内容は、モバイルユーザをターゲットにした情報番組(エリア情報、交通情報など)、簡易動画を用いた音楽番組、スポーツ中継など、またカーユーザをターゲットにした情報番組、即ち位置情報や車内向けサラウンド放送、更に固定受信をターゲットにした高品質の音楽放送、情報番組などがある。
表2
特に、エフエム東京は、3セグメントと用いたモバイル層をターゲットにした、移動体環境下での広帯域メディア、MPEG4による簡易動画などのマルチメディア放送、新たな音声サービス(上記サラウンド音声放送)などを計画している。
受信機の形態としては、ポケットラジオ、見える風のポケット型、カーオーディオ型受信機、PDAタイプ、携帯電話、カーナビタイプの受信機、据え置き型(固定受信)、パソコンアダプタ型などが考えられる。
この実用化試験放送、特にエフエム東京の3セグメント放送では、特に高速道路などでの受信実験をして、その放送品質、サービスエリアなどを測定している。実験の成果としては、従来のアナログTVよりはよい品質の簡易動画の受信に成功した。(図1参照)また、ゴーストの起りやすい地域でも安定した受信のできることを確認している。
これらの実用化試験放送受信をふまえて実用放送へとつなげる予定である。
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