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目黒会について/事業内容/移動体通信研究会/第49回/高速電力線通信からの妨害波の許容値

第49回移動体通信研究会

高速電力線通信からの妨害波の許容値

電気通信大学 
 情報通信工学科 教授 上 芳夫


1) これまでの経緯と許容値は
  現在までも電力線を使用する通信方式は、10kHzから450kHzの周波数帯域を用いる方式が運用されている。昨今の高速データ伝送技術を電力線通信にも適用できるようにとの要望が強く、平成14年度に総務省は「電力線搬送通信設備に関する研究会」で使用周波数帯の拡大を検討したが、航空管制や短波放送等の無線通信に対する有害な混信になりうると、この時点では困難であるとの結論に達した。平成16年3月からは設備の許可制度によって屋内電力線の使用を中心とした実験が行われてきた。その成果をうけて平成17年に総務省は「高速電力線搬送通信に関する研究会」を発足させ、高速電力線搬送通信(PLC)と無線利用との共存可能性、共存条件等について検討した。この結果、「建築物内に敷設された電力線を利用して通信を行うための機器(PLC機器)が発生するコモンモード電流は、周波数2MHzから30MHzまでの範囲において、コモンモードインピーダンス25Ω、LCL (ディファレンシャルモード電圧とコモンモード電圧の比で定義される非平衡の度合)が16dBのインピーダンス安定化回路網(ISN)を用いて帯域幅9kHzで測定したとき、30dBμA(準尖頭値)以下であること」との提案がなされた。情報通信審議会ではこの報告を基に情報通信技術分科会CISPR(国際無線障害特別委員会)委員会の下に設けた「高速電力線搬送通信設備小委員会」で研究会案の検証と測定法の検討を委嘱した。その結果、「周波数15MHzから30MHzにおいては、20dBμA(準尖頭値)以下に一部変更」とする報告を行った。(その後、情報通信審議会で承認され、9月13日の電波管理審議会(総務相の諮問機関)においてこの案を容認する答申がなされた。)PLC通信からの妨害波許容値策定に参画した一人として、その考え方を概説する。

2) PLCにおいて懸念されること
 PLCはすでに敷設されている電力配線を使用することから、新たなインフラ設備を要しないことが最大の特長である。しかし屋内の電力配線は本来高周波信号の伝送用ではないので、高周波信号が漏えいし、同じ周波数帯域の他の通信に妨害を及ぼす可能性が最大の関心事である。この概念を図1(7番目PPT図面)に例として示す。平成14年度の研究会においては、屋外配線の使用をも対象にしていたので、漏えい電波(妨害波)レベルが非常に高く、他の通信に妨害を及ぼす可能性が非常に高いことが原因である。平成17年の研究会においては、建物内の配線に限定し、環境雑音以下に抑えて共存できるかの検討が行われた。
図1 
 3) 漏洩電波(雑音、妨害)を規制するには
 PLCは、高周波信号をディファレンシャルモード電流(等量逆相)成分で2本の電力配線に流すものである。しかし何らかの理由でバランスが崩れるとコモンモード電流(等量同相)成分が発生する。漏えい電波を発生する主要電流成分はこの成分である。したがってこれをどのように評価し、共存できるようにするのかが問題になる。環境雑音レベルは地域(商業地域、住宅地域、田園地域)によって異なる。漏えい電波を評価するには、コモンモード電流を見積もり、配線で発生する電磁界が建物の遮へいや、発生源から離れた地点(離隔距離)でどの程度になるかを評価することによって、このレベルが環境雑音レベルを超えないようにする必要がある。この環境雑音レベルに関して推進派と反対派の乖離は非常に大きなものであった。
 電力配線に接続されている電気製品はさまざまであり、配線の状況も各戸まちまちであり、コンセントから見た電力配線の電気特性は時々刻々変化する。このため、同じPLC機器を接続したとしても発生するコモンモード電流は変化する。したがって、PLC機器がどのようなコモンモード電流を発生するかを評価するために、どのような状況下で試験すべきかが問題になる。研究会では、コンセントから配線を見た電気特性を非常に多く測定し、その統計的な値から電力配線を模擬するISNの仕様を前述した値に決定し、これに接続したPLC機器(被試験器)から発生するコモンモード電流を規定した(図2参照23番目PPT図面)。PLC機器をコンセントに接続したとき、コモンモード電流を大きく左右する要因はLCLであり、測定値の統計結果からコンセントの99%以上がLCL値16dB以上になることから、ISNのLCLを16dBに設定した。
図2
 4) CISPR国内委員会では
平成17年の研究会での報告をCISPR国内委員会での審議において変更した。これは、研究会における理論的な評価が提言に合致したPLC機器でどのような漏えい電波を発生しているかを実測検証した結果によるものである。この実験は委員への公開実験として行われ、特に代表的な家屋における結果を反映したものである。
 5) おわりに
電波管理審議会は答申にあたり、許可の際には慎重な審査と混信対策の徹底を求める意見書を添付している。これはPLCによる漏えい電磁波に関する懸念が完全に払拭されていない可能性を示すものである。PLC製造者からはこの規定は非常に厳しいとの声が高いが、電磁環境の整合性を図る上からも更なる努力をメーカ、技術者に期待したい。

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