目黒会ロゴ
検索方法説明
問い合わせ グッズ販売 関連リンク集 情報セキューリティ方針 サイトマップ
目黒会報/主要な記事/法人化と電気通信大学

会報16-2の主要記事

法人化と電気通信大学

電気通信大学 新学長 益 田 隆 司

益田隆司学長この4月に梶谷前学長のあとを継いで、法人化後の初代学長に就任させていただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。法人化後の現状とこれからの電気通信大学があるべきと考えている姿について思い付くところを書かせていただこうと思います。
 法人化は、大学に経営をもたらすとか、あるいは、大学間に競争を発生させるとかいうことがいわれておりましたが、善し悪しとは関わりなく、予想していたよりもはるかに凄まじい勢いでこれまでの大学が変わりつつあるように思います。法人化によってそれぞれの大学に特長が出て、大学間がバラエティに富むというのが望ましい姿でしょうが、そうはならなくて、何年か後には、勝つ大学と負ける大学が直線的にはっきりと分かれるのではないかということを実感しています。国主導で多くのことがなされている形態に変化はありませんし、それに加えて、やはり国主導の評価が強く認識されているからです。1 つの評価軸に沿ってすべての大学が動いているように思います。多くの大学が、21世紀COEをとることに血道を上げているのもそういったことの典型です。電気通信大学が勝つ大学として生き残るためには、これから何をしていかなければいけないかということが、目下の私の関心事です。

役員と経営協議会外部メンバー
 法人化後の電気通信大学の体制からご紹介することにいたします。まず、役員です。電気通信大学の理事の定数は4名です。大学内の方としては、木村忠正教授、酒井 拓教授、福田 喬教授にお願いいたしました。それぞれ、総務・国際、研究・評価、教育・学生を担当分野としていただいています。理事の内の1名は学外者を起用することと定められています。非常勤理事として、武田建二さんにお願いいたしました。武田さんは、日立製作所で産学連携の責任者をなさっています。電通大の産学連携を担当していただいています。常勤理事の3名の方には副学長を兼務していただいています。次に監事2名はいずれも非常勤です。会計監査担当は高柳武彦さんです。東京三菱銀行系の方です。教育研究の業務監査は永宮正治さんにお願いいたしました。永宮さんは、高エネルギー加速器研究機構の教授で、現在、原研との間で開発が進んでいる巨大加速器プロジェクトの責任者をされています。10年ほど前までは、コロンビア大学の物理学科の教授、学科長等をなさっていました。日米の教育研究の質の差を熟知されています。
 法人化に合わせて、上記メンバーと学長で構成される役員会、従来の評議会に近い役割を担う教育研究評議会、それに、経営協議会が設置されました。教育研究評議会のメンバーの選出は従来の評議会とほぼ同じと考えていただいていいかと思います。法人化に伴って、目新しいのは経営協議会です。経営に関する重要事項を審議する場です。学内メンバーと同数以上の学外メンバーで構成することと定められています。学内メンバーは、学長、常勤理事3名、EC、IS部局長の6名です。学外は6名の方々にお願いいたしました。まずは、同窓会長の前田隆正さんです。法人化後は大学をサポートして下さる組織として、同窓会が重要になります。次は、調布市長の長友貴樹さんです。電通大と調布市は平成15年5月に相互友好協力協定を締結いたしました。さらにNTT ドコモ副社長から最近ドコモエンジニアリング社長に移られた津田志郎さんです。NTTはこれまで電通大がもっともお世話になることが多かった企業です。これからもご支援を期待しています。以上お3人がアカデミア以外の方です。アカデミアの方としては、奈良先端科学技術大学院大学長の鳥居宏治さん、物質・材料研究機構理事長の岸 輝雄さん、それに、京都大学経済研究所長の佐和隆光さんです。奈良先端大は、後述の日経ランキングで第2位に位置付けられています。外部資金獲得、大学院充実策のノウハウ等に関してご指導いただきたいと考えています。物質・材料研究機構は3年前に独立行政法人に移行しました。岸さんは、日本学術会議の副会長でもあり、大学運営のベテランでもあります。電通大の経営についてご指導いただけることが多いと期待しています。佐和さんについては、ご紹介するまでもないと思います。日本きっての、計量経済学者であるだけでなく、幅広い分野での論客でいらっしゃいます。国立大学法人化に際しては、そのネガティブな側面に対しても厳しい社会的発言をなさっていました。法人化後の大学のあるべき姿についてご指導をいただきたいと考えています。

運営の現状
 法人化後の大学運営についてこれまでと変わった点を書いて見ます。役員会は、月に1回で、大学運営で発生する種々の案件の審議、それに、教育研究評議会、経営協議会への付議案件の整理をしています。大学経営の根幹的なことに関する審議は徐々にといったところです。教育研究評議会は、月に1回で、ほぼこれまでの評議会と同じと考えていただいていいかと思います。経営協議会は3ヶ月に1回程度ということで、これまでに2回開催されました。今年度の概算要求の審議、それに電通大の現状について外部の方々にご説明しています。次回以降、これからのあるべき姿等についてご意見をいただきたいと考えています。法人化に伴って、企画調査室を学長の元に立ち上げました。教授、助教授合わせて10名程の方に室員をお願いし、毎週月曜日の朝、大学での重要課題の企画立案をお願いしています。現在は、大学院後期課程の充実策、科研費獲得の向上策、それに、次期COE対策等を主要テーマとしています。

教育力の現状
 電気通信大学は、教育をしっかりやる大学であるとの社会的評価は定着しています。学部卒業生、修士修了生は企業人として高い評価を受けています。現在の電通大の地位も、優秀な卒業生の社会的評価に支えられている側面が多分にあると思います。しばらく以前平成15年10月25日付けの週刊ダイアモンドの記事にあった大学間の総合ランキングでは、電通大は14位に位置しています。ここでは、入試の志願者の状況、社会の注目度、教育力、研究力、OB力等を数値化し、その組み合わせで評価をしています。平成15年度から始まった教育COEといわれている「特色ある大学教育支援プログラム」(グッドプラクティス)でも、知能機械工学科が中心となって提案した「『楽力』によって拓く創造的ものつくり教育」が、採択率12%の難関を突破して、見事採択されています。
 学生数について見ますとEC学部の学生数は昼間コースが定員690名、夜間主コースが定員180名で、毎年その数倍以上の受験生が集まり、定員を若干超える程度の入学者を選考しています。大学院の前期課程に関しては、ECの定員が188名、ISの定員が118名です。今年度のデータでみますと、ECは329名、ISは124名の入学者を確保しています。ECは定員に対して、1.8倍近い入学者です。学部定員に対して修士課程の定員が少な過ぎるともいえます。
 問題は大学院後期課程です。大学院後期課程は教育力というより、研究力として考える方が妥当かもしれません。ECは定員28名、ISは定員38名です。今年度のデータでみますと、後期課程の入学者は、ECが25名、ISが14名でどちらも定員を下回っています。ここ数年で見ますとECは定員を若干上回る程度、ISは例年かなり定員を下回る入学者となっています。大学院後期課程の学生を充実させることは研究力を高めるためにも本質的に重要なことです。ISの場合には独立研究科ですので教員数積算の根拠は大学院学生の定員であり、その意味でも、法人化によって大学に経営が求められるようになりますと、定員割れを防ぐ努力はこれまで以上に強く要求されるようになります。その一方で、日本のような学生の動きの少ない環境で、独立研究科として定員を上回る大学院後期課程の学生を集めることは至難の業ということは理解できますし、学部をもつECとは異なったカラーの独立研究科があることのメリットも大きいと考えています。

「研究力」の現状
 厳しいデータもご報告せねばなりません。今年2月16日の日本経済新聞に、全国の国公私立大学の工学系学部の研究開発の総合力が「研究力」と銘打って、そのランキングが掲載されました。研究費獲得額、論文発表・特許出願数、産学連携の取り組みの3つの視点の組み合わせによるものでした。その順位を表1に示します。目を惹くのは、奈良先端大と東京農工大の躍進です。電通大は31位と満足できない位置にいます。豊橋、長岡、名工大といった工科系大学よりも下位に位置付けられているのは、悔しい思いでいっぱいです。その一方でこの順位付けは現実を反映しているといった感じもしています。電通大よりも上位にある工科系大学は、以前から研究力の向上のために全学で取り組んでいるという話を聞いています。

表1 工学部の「研究力」(日本経済新聞 平成16年2月16日
順位 大学名 順位 大学名
1 大阪 31 山形
2 奈良先端科学技術 31 電気通信(電気通信)
3 東北 33 岡山
4 東京 34 信州
5 東京農工
34 東京理科(工・第一部)
5 早稲田(理工) 34 立命館(理工)
7 東京工業 37 明治(理工)
8 慶応義塾(理工) 38 広島
9 名古屋 39 九州工業
10 京都 40 宇都宮
11 九州 41 関西
12 神戸 42 愛媛
13 山口 42 東京都立
13 北陸先端科学技術 44 千葉
15 豊橋技術科学 44 関西学院(理工)
16 長岡技術科学 46 大分
17 北海道 47 静岡
18 名古屋工業 47 高知工科
19 京都工芸繊維(工芸) 49 香川
20 新潟 50 鳥取
20 徳島 51 福井
22 横浜国立
52 北見工業
22 豊田工業 52 山梨
24 岐阜 54 富山
25 大阪府立 54 鹿児島
26 岩手 56 室蘭工業
27 金沢 56 法政
28 熊本 58 茨城
29 埼玉 59 佐賀(理工)
30 群馬 60 金沢工業
    60 同志社

 外部資金の取得額でいくつかの大学を比較して、表2に示します。この数字は、平成15年度の松澤委員会の報告書からの引用です。外部資金は、奨学寄付金、民間との共同研究、受託研究、科学研究補助金の合計です。データが平成14年度と少し古いことをお許し下さい。表中括弧内は、科学研究費補助金を表しています。電通大が他の工科系大学に比較して決して優位な状況ではないことが読み取れます。

表2 平成14年度外部資金獲得状況(単位千円)
大学名   教官数   外部資金   科学研究補助金
電通大   361名   612,995 (329,900)
東工大  1,155名   6,564,685 (3,332,800)
農工大  426名   1,956,126 (653,200)
長岡技科大 221名   799,037 (332,300)
名工大  380名    992,803 (322,400)
豊橋技科大 219名   805,153 (367,400)
京都工繊大 318名   665,877 (228,300)
九工大   377名  1,133,013 (347,300)
北陸先端大 155名  1,351,844 (199,100)
奈良先端大 207名  1,904,546 (972,400)

 研究は元来個人的なレベル、あるいは、焦点がはっきりとしたグループのレベルで評価されるもので、大きな組織間の研究力の比較をお金の獲得額とか、論文の数とか、産学連携の程度で安易に比較することには強い抵抗を感じます。同じような目で企業間の研究力を評価したとき、島津製作所の研究力は、決して最上位の近くにはランキングされないでしょう。でもそういったところにもノーベル賞を受賞する研究者がいるのです。電通大でも、平成14年度に、量子・物質工学専攻、レーザー新世代研究センターが中心となった「コヒーレント光科学の展開」が、21世紀COEプログラムとして採択されました。21世紀COEプログラム自身は、大学院後期課程の充実を謳っていますので、優れた教育組織の拠点づくりという見方もできます。
 組織間の安易な比較の流行に腹立たしさを憶えますが、これも時代の流れです。「研究力」が低いという評価が定着するとお金も来なくなるでしょうし、いい教員、学生も集まらなくなりますから、決して軽視することはできません。

産学連携活動の現状
 法人化後の大学では、外部資金の獲得が大学の将来にとって決定的に重要になります。すべての大学人が獲得を目指さないといけないのは、科学研究費をはじめとする国からの競争的資金ですが、これからはそれに並んで、企業との共同研究、受託研究による資金の獲得が重要です。産学連携は、昨年度までは、共同研究センターが中心になって推進していましたが、今年度からは、より強力な推進を目指して、地域・産学官等連携推進機構が設置されました。森崎 弘教授を機構長にお願いしています。電通大の現状は決して産学連携が活性化している状況とはいえません。機構の関係者には、学外の優秀な人材もいらっしゃいますし、電通大のTLOであるキャンパスクリエイトも日常的に新聞等のメディアにも登場しているのですが、産学連携に関心を持って下さる教員の割合が、高々20%程度であり、かつ、学科、専攻によるバラツキが大きいという問題があります。電通大は理工系の単科大学ですので、産学連携に関心を持って下さる方の割合がもっと増える必要があります。他大学に比較して優位な状況にあるとはいえないのが現状です。産業界で活躍されている目黒会の方々のご支援もぜひお願いしたいと考えています。

目指すべき方向
 法人化を迎えた電通大の現状について書いてきました。こういった状況を踏まえて、電通大はこれからどのような方向を目指すべきかについて考えてみます。学則第1条には、電気通信大学が覆う分野は、情報、通信及び関連する諸領域の科学技術に関する分野とあります。この分野で研究重点大学として生き残ることが目指すべき方向と考えています。なぜ研究重点大学でなければいけないのでしょうか。これは従来電通大が評価されてきた学部修士の教育を軽んずるということではまったくありません。それはそれとして置いて、研究面で日本トップの大学とならなければ電通大は生き残れないと考えています。もしその座を手に入れることができなければ、時間の経過と共に、予算規模は減額され、教職員数は大きく減じざるを得ないことになると思います。教職員、学生共、現在の質が保てなくなることも明白です。
 旧帝大系の総合大学は研究大学として残ることは間違いありません。また、数多くの地方大学も地方の活性化の名の下に生き残る道が用意されています。工科系の単科大学、中でも、都心にある工科系の単科大学は逃げ道がない厳しさがあります。地方の単科系の大学には、地元産業との強い連携を図っているところもあります。でも都心の理工系単科大学は真っ向から教育研究、競争的資金獲得、産学連携の実績で勝負しなければならないことが運命付けられています。
 教育実績は定量化が難しい側面がありますが、研究実績に関しては、電気通信大学のような理工系のコア分野を担当している大学は、もっとも評価されやすいと思います。研究に関する外部からの評価、競争的資金の獲得額、あるいは、大学院後期課程の充足率などいずれも定量化が難しくないものです。研究重点大学として生き残るために、重要と思われる課題のいくつかを挙げてみます。
(1)競争的資金の獲得額を上げること
 科研費等の競争的資金の獲得額を増やすことは何より重要です。大学評価において、どのくらい研究力があるかの有力な指標として、競争的資金の獲得額が取り上げられることはまちがいありません。
(2)21世紀COEの獲得を目指すこと
 21世紀COEのような仕組みがほんとうに日本の大学を活性化するかは分かりません。その前身ではトップ30といっていました。少なくともそのときには、大学の単純な序列構造を一層強めるような仕組みには賛成できずに、全国紙に記事も書きました。(http://www-masuda.cs.uec.ac.jp/~masuda/etc/image/nikkei20010929.jpg、http://www-masuda.cs.uec.ac.jp/~masuda/etc/image/asahi20011106.jpg)
 トップ30から21世紀COEに変わって、多少その主旨に変化があったかもしれません。現在となっては、その賛否をいっても無意味なことです。21世紀COEのインパクトは凄まじく、上位の大学ほどその取得を競い合う状況になってしまいました。第2期以降、現在のままのCOEが継続されるかは分かりませんが、この種のものが続くことは間違いありません。現時点での大きな問題は、21世紀COEの「情報、電気、電子」分野で電通大の採択がないことです。この分野はまさに本学の目的とする分野です。平成14年度この分野には20プログラムが採択されました。電通大はその中に残ることができませんでした。21世紀COEの初年度であったので多少の油断があったといえるかもしれません。いまから数年内に来る次回のチャンスで再度採択されないようなことがあると、それは本学が研究重点大学としては存立し得ないということに繋がってくるといっても言い過ぎではないと考えています。かといってその取得が容易かというとまったくそうではないと思います。すでに走っている1部リーグに属する20チームとの入れ替え戦に挑戦することになります。高々数チームの入れ替えしかあり得ないと思います。いまからそれに向けた大学としての取り組みが必要と考えています。
(3) 大学院後期課程の充実
 研究重点大学を目指すためには、大学院後期課程の充実は必須です。産業界からは必ずしも大学院後期課程の学生数を増やすという要望はないと思います
が、後期課程が充実しない大学は研究大学としては負けというレッテルが貼られます。現時点では、後期課程は定員66名を満たしていません。周辺他大学との競争に負けています。数年内に毎年100名前後の入学者を確保することが必要です。そのためには学問を継承する高度な研究者としての認定というこれまでの学位に合わせて、学位取得後、産業界に就職することを標準的なコースとするためにも、産業界に役立つ高度な技術者としての認定をする学位を設けることの検討も必要になると思います。たとえば、私の専門とする情報の分野で、最近の電通大情報工学専攻から出ている学位を見ても、いわゆるIT時代に相応しいと思われるような学位論文はほとんど見当りません。IT時代を先取りするような学位論文も欲しいところです。
 大学院後期課程を充実させるいま1つの方法は、企業技術者としての実績をもった社会人入学を増やすことです。実績のある人材に対しては、当然、期間短縮等の利点を用意する必要があります。電通大OBの方々で、学位取得に関心がある方は、ぜひご相談いただければと思います。われわれの方でも社会人の方々に学位を取得していただきやすい環境を整えたいと思っています。
(4) 教員人事
 法人化は大学に経営をもたらします。大学経営でもっとも重要なことは何でしょうか。人事です。大学は人事ですべてが決まるといっても言い過ぎではありません。法人化に合わせて人事の仕組みにいろいろな工夫をこらしている大学も出てきています。電気通信大学に相応しい人事の仕組みを考えることもこれからの重要な課題と考えています。

 法人化への移行に際して、電気通信大学はこれまでの大学からの距離を小さくして臨むというソフトランディングの道を選択しました。そこで法人化後の現在も、役員会の元に、目標計画、組織・人事、財務改善のWGをつくり、他大学の法人化対応等も参考にしながら、電通大に相応しい法人化後の大学運営、経営の仕組みづくりの検討を続けています。上記のような重点課題に今後大学としてどう取り組むかが、そして、その取り組みが教職員の方々にどのように受け入れられるかが、法人化後の電気通信大学の将来を大きく左右することになると思います。大学の活性化に向けて全力であたりたいと考えています。目黒会の方々の力強いご支援も切にお願いする次第です。

Copyright 2003 Megurokai,All Rights Reserved
このページの先頭へ戻る