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巻 頭 論 壇
「もう一つの大学改革」

電気通信大学 学長 益 田 隆 司  電気通信大学 学長 益 田 隆 司 

 平成17年 3月2日〜4日まで情報処理学会の全国大会が電気通信大学で開催されました。「もうひとつの大学改革」はそこで私が行った招待講演の標題です。その一部をご紹介したいと思います。
 ここ10年以上前から、大綱化、大学院重点化、そして、法人化と大きな制度改革が続いています。これらによって日本の大学はほんとうに活性化しつつあるでしょうか。どうも私にはそう思われない。改革すべきもっとも本質的なところに手をつけていない。根幹となるところに手をつけずに、その上から壁を塗るように制度改革ばかりをやっているという印象をもっています。もっとも本質的なところは何か。それは、教員にも学生にもモビリティがないことです。このもとは、明治時代からの日本の大学の設立の経緯にありますが、そのことはさておいて、これから先を見たときに、中でも大事な学生のモビリティについて述べてみたいと思います。
 最近は理工系の学生は、多くが大学院に進学します。電気通信大学でも大学院への進学率は、50パーセント前後になっています。将来的にはもっと高まって欲しいと考えています。アメリカでは、20〜40の研究大学がありそれぞれに高いレベルの大学院をもっています。その大学院で学ぶ学生は、ほぼ全員が他大学出身者となっています。その意味で学部と大学院は切り離されています。ところが日本ではどうでしょう。少なくとも独立研究科でない学部をもっている大学院研究科では、そこに入学してくる学生の圧倒的多数は自大学の出身者です。ですから、最近あちこちにできている独立研究科、あるいは、研究所の上にできている大学院ではどこも学生を集めることに苦労しています。
 日本では自学科の学生で大学院進学を希望するものは、その学生が優秀であるほど、自専攻の大学院に進学させようとします。また学生もあえて他大学の大学院に進学するよりも、自大学の大学院に推_でももらって進学した方が楽なのでその道を選びます。
 アメリカの研究大学の大学院は専門店の集合体のような構造になっていて、学生は自分がやりたい専門店を探して、大学院進学時に移動をします。「優秀な学生がいたときなぜ自分の大学院に勧誘しないのか。」とアメリカの研究大学の複数の教授に尋ねたことがあります。「学生は移動させた方が成長するからだ。」というのが共通の回答でした。
 日本の学生の大学院進学者の多くは修士課程を修了すると企業に就職します。他大学の大学院に進学することは、いろいろな意味でのオーバヘッドもあります。はじめから自分は修士課程のみで就職を考えている学生は、あえて他大学に進学しなくてもいいかと思いますが、大学院の後期課程まで進学しようと考えている学生は、できるだけ出身大学とは異なった大学の後期課程に進学するようなことができると、日本の大学にも活性化の道が開けるのではと思います。ただこういった改革は、東大、京大といった大学院重点化大学がまずはじめてくれる必要がありますが、ある意味での大きな既得権を手放すことにもなりますので、容易なことではないと思います。もし近い将来、大学の将来を心配して、そういった動きでも出てくれば、電気通信大学の大学院も新たな方向性が見えてくるのではないかと考えています。

 
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